カレメオンのキューブに関する話

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PLLのCP読み講座

こんにちは、カレメオンです。

この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2021の二日目の記事です。

昨日の記事はSakakiさんの  4BLDで非公式Sub4分を達成した時の分析・記憶・実行のやり方  でした。かなり力の入った超大作でしたが、3×3のBLDですら挫折した自分にとっては難しすぎました…笑

明日の記事はうえしゅうさんの  ZBLLについて  です。最近は僕もZBLLに少しずつ手を出しているので、どのような記事になるのか楽しみです。

 

 

さて、この記事では、3×3  PLLのCP読みについての説明をします。

 

 

はじめに

この記事ではCPに関するやや発展的な内容を扱います。COLLや2×2のCLLなどについて理解していると話がより分かりやすくなると思います。

また、ここで紹介する技術はSub10をしているキューバーでも使う人は少ないです。速くなるために絶対に必要というものでもないので、「こんなものもあるのか」程度に読み流してもらって構いません。

駄文です。


CP読みとは

CP読みは、OLLを回す際にその後のPLLのコーナーの状態も把握するテクニックです。

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このgifでは、OLLを回した直後にU2をして、PLLを回すためのAUFを事前に行なっています。これがPLLのCP読みです。

 

もう少し詳しく見てみましょう。

PLLをコーナーにのみ着目すると、3つの種類に分けられます。

1,無交換

コーナーの位置が正しい状態

例)U Perm,H Perm

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2,隣接交換

隣り合うコーナーが入れ替わっている状態

例)T Perm,G Perm

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3,対角交換

対角線上にあるコーナーが入れ替わっている状態

例)N Perm,E Perm

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CP読みでは、OLLの時点でPLLが上に挙げた3つのうちどのパターンかを判別します。そして、隣接交換については、ヘッドライト(正しい向きで揃っている2つのコーナー。上のT Permの画像だと左面にあたる)がどの面に現れるかを先読みします。

 

CPという言葉の定義については様々ですが、この記事ではコーナーの位置が合っているか否かの「コーナーの状態」として使っていきます。


CPを読むことの利点

CPを読むことでOLLを回す前にPLLの選択肢を絞ることができ、判断の簡略化や判断時間の短縮が期待できます。他にも技術的な面とは別に、選択肢が減ることで心に余裕を持ってPLLに取り組めます。

また、コーナー隣接交換のPLLは、ヘッドライトをL面に置いて回すものが殆どです。ヘッドライトの位置を読むことでOLLの後にヘッドライトをL面に置くためのAUFまで分かり、PLLまでの流れをよりスムーズに繋げることができます。上のgifではこれを行っています。

 

CPのパターン

CPには大きく分けて7種類,全43パターンがあります。また、CPが同じでもEOに複数のパターンがあるため、一つの種類のCPに対して複数のOLLがあります。それぞれのCPのパターンについてはこちらを参照してください(ROUX MethodのCMLLの手順表です)。

それぞれのパターンは、コーナーの3,4カ所間の色関係(同色か,隣接色か,対面色か)を基に判別します。参考までに、僕が使っている判断基準を下に載せておきました。僕は○をつけた場所の間の色関係でパターンを判別しています。丸の色に意味はありません。

 

Sune Cases

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AntiSune Cases
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Pi Cases
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T Cases

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U Cases
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L Cases
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H Cases
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CP読みの方法

それでは、具体的な例を示しながら説明します。言葉と画像だけでは説明の限界があるので、実際に自分でキューブを回しながら読むことをオススメします。


T Caseを例にしてみましょう。

このCPのOLLには29番や34番などがありますが、ここでは33番を例にします。

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このOLLの手順はR U R’ U’ R’ F R F’です。上に載せた判断基準を基にすると、全部で6種類あるCPのパターンのうち、この手順を回した後にCPが揃うのは「下の列が同色,上の列が対面色」のときになります。

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対して、このパターンと対極の関係にある「下の列が対面色,上の列が同色」のとき、CPは対角交換になります。

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これ以外の4つのパターンだった場合、CPは隣接交換となります。ヘッドライトの位置についてはこの下に書いてあります。

初めはCPが無交換か隣接交換か対角交換かの3つが判別できれば充分ですが、最終的には隣接交換でのヘッドライトの位置まで読めるとより良いです。CP読みの真髄はヘッドライト読みにあります。

そして、これをT Caseの『基本の型』とします。

 

基本の型

L Casesを除いた6種類のCPには、それぞれに基本の型があります(僕が勝手に決めました)。それらのパターンを押さえておくだけで、全部で57パターンがあるOLLのうち半分近いOLLのCP読みに対応できます。僕の場合は基本の型のみで28個のOLLに対応していました。CPの変化の仕方は使っている手順によって変わるため、人によってこの数は増減します。

 

それぞれの基本の型をこの下に置きました。これは覚えるしかないです。頑張りましょう。

L Casesは手順ごとにCPの変化がバラバラであり、一般性のある基本の型がほぼ無いため、基本の型が見つかりませんでした。ちなみに僕は、L Casesは他のCaseと比べて判断が難しいように感じるため、 L CasesのCP読みは殆ど行っていません。

一部の画像の下に書いてあるB,R,F,Lは、それぞれの手順を画像の下をF面にして回した後にヘッドライトが現れる位置を示しています。

 

O Cases

例)OLL28 : r U R' U' M U R U' R'

OLL57 : R U R' U' M' U R U' r'

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Sune Cases

例)OLL27 : R U R' U R U2 R'

OLL15 : r' U' r R' U' R U r' U r

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AntiSune Cases

例)OLL26 : R U2 R' U' R U' R'

OLL16 : r U r' R U R' U' r U' r'

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Pi Cases

例)OLL22 : R U2 R2 U' R2 U' R2 U2 R

OLL49 : r U' r2 U r2 U r2 U' r

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T Cases

例)OLL33 : R U R' U' R' F R F'

OLL32 : S R U R' U' R' F R f'

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U Cases

例)OLL45 : F R U R' U' F'

OLL46 : R' U' R' F R F' U R

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H Cases

例)OLL21 : R U2 R' U' R U R' U' R U' R'

OLL54 : r U R' U R U' R' U R U2 r'

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気をつけてほしいのは、この表のヘッドライトの位置は、画像の下側をF面として回したときの場合を示していることです。これらの基本の型は開始面が異なる場合は、ヘッドライトの現れる位置もそれに合わせて変化します。

例えばこの2つ。OLL45[F R U R' U' F']とOLL41[R U R' U R U2 R' F R U R' U' F']はどちらも基本の型の手順ですが、開始面におけるコーナーの向きが異なります。

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OLL41のコーナーの向きはOLL45のものをU回転した形になっています。また、OLL45のではヘッドライトはB面に現れます。よって、OLL41のヘッドライトの位置はB面からU回転だけずれる=R面に現れることが分かります。

これにも対応できる表を作れば良かったと、今になって後悔しています

 

ところで、ある2つの手順を先ほどの判断基準を基にして比較したとき、一方では同色の関係になっていた部分が他方では対面色に,一方では隣接色だった部分が他方でも隣接色であったとします。この2つの手順をまとめて「対極の手順」と呼ぶことにします。

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例えば、この2つは対極の手順であると言えます。どんなCPにも、必ず相手となる対極の手順があります。

上に挙げた画像から、対極の手順同士では、PLLのCPも反対の関係になることが分かります。一方が無交換だったとき、他方は対角交換に。逆も然り。ヘッドライトの位置はそれぞれ反対側の位置に現れます。これを理解していると、6つあるCPのパターンのうち下の図の片方の列の3つを覚えれば、その対極の手順のCPについては即興で対応できます。が、瞬時に判断するにはかなりの技術が必要になるため、僕はあまりオススメしません。

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基本の型が使えない例外パターン

基本の型が対応しているのは約半分のOLLのみで、残りの半分は自力で法則を見つける必要があります。とはいえ、それも難しくはありません。「無交換と対角交換になるCPは基本の型と同じだけれど、ヘッドライトの位置だけが基本の型と異なる」など、基本の型に似ているものも多いためです。SuneのCPであるOLL8やOLL11はその一つの例です。また、基本の型になれる程の一般性は無いけれども複数の手順に使うことのできる型も存在します。それら一つひとつを挙げるとキリが無いため、ぜひ自力で見つけてみてください。ここまでくると、きっと楽しめるはずです。

 

小技とか

・CPを読むためには最低でも3カ所の色を確認する必要がありますが、その内の2カ所の色が確認できれば、CPのパターンを2択に絞り込むことができます。

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例えばこの画像の場合。このOLLを基本の型に対応したアルゴリズム[r U2 R' U' R U' r']で揃えるとします。

この状態では、左上の青と右下の緑が対面色の関係であります。この2カ所の色関係を確認することで、PLLは無交換か対角交換のどちらかであることが分かります。このように、2箇所の色が分かればCPのパターンを2つにまで絞り込むことができます。そして、その絞り込まれた2つのCPは必ず対極の関係になります。

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手順を回した後はこのようになりました。ここから、PLLは対角交換だと確定できます。そして、F面に青のブロックと緑の対面色があることから、PLLはV PermかY Permの二つにまで絞ることができます。ちなみにこれはV Permです。

もしCPを全く読んでいなかったら、この時点ではPLLが隣接交換と対角交換の2つの可能性がまだ残っているため、判断により多くの時間を要したはずです。完璧なCP読みはできずとも、少しでも読むことでその後の処理をよりスムーズに行えるようになります。

 

・U Permの手順をM系にすることで、無交換PLLのアルゴリズムの一手目をM2に統一ができます。これにより、CPが無交換だと読めた場合はOLLを回し終える前にM列の構えをしておくことができ、よりスムーズにPLLへと移ることができます。

 

・1つのOLLに対して、無交換になるCPが異なる手順を2個以上覚えておくことで、一方の手順を回したら対角交換になるパターンももう一方の手順を回すことで回避することができます。これの上位互換で、OLLで CPに合わせた手順を回すことでPLLを必ず無交換にするSubstepをOLLCPと呼びます。

 

・上で紹介したOLL33とCPが同じでアルゴリズムが似ているものとして、OLL24[r U R' U' r' F R F']とOLL32[S R U R' U' R' F R f']があります。これらは上のアルゴリズムにスライスムーブを加えたものです。スライスムーブはエッジのみを動かしてコーナーには影響を与えないため、CPの判断方法は変わりません。これはこのOLLに限らず、他のCPのOLLにも当てはまります。

また、OLL19は一般的な手順[r' R U R U R' U' r R2 F R F']では基本の型が使えませんが、[S' R U R' S U' R' F R F']と、OLL33にスライスムーブを加えた形に変形することで、上と同様に基本の型が使えるようになります。このように、基本の型が使えるOLL手順に乗り換える手もあります。

 

・ヘッドライトの位置が読めたら、その利点を活かすためにもPLLの二側面判断ができるようになっておきたいです。ヘッドライトの位置は既に分かっているため、前情報が無い場合よりも少ない情報量で楽にPLL判断ができる筈です。A PermやJa Permなどの PLLは、ヘッドライトをL面に置く手順に乗り換える手もあります。僕はこの3つの手順を使っています。

Aa Perm : R U R' F' r U R' U' r' F R2 U' R'

Ab Perm : R' D' R U2 R' D R U R' D' R U R' D R

Ja Perm : x R2 F R F' R U2 r' U r U2 x'

ヘッドライトの位置が読めたらそれをL面に持っていくのが一般的ですが、敢えてそれを行わない手もあります。例えばヘッドライトがB面に来ることが読めた場合、AUFをせずにF面とR(L)面を見ることで、ヘッドライトの位置とニ側面の情報を把握することができます。ヘッドライトをL面に置いて二側面判断をするよりも簡単に、より確実な判断ができます。

 

・世界のトップキューバー達はOLLからPLLまで一切手を止めることなくソルブしていますが、彼らはCP読みと同時にOLLで保存されるブロックを読んでいます。

僕もあまり詳しくないので多くは書けませんが、簡単に残しておきます。

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例えばこのOLLをr U R' U' r' F R F'で揃えるとします。このOLLは基本の型が使えるため、ヘッドライトはR面に現れることが分かります。また、このOLLの特徴として、右手前にあるこの2×2×1のブロックは位置が変わることなくPLLまで保存されます。

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ここから、PLLは

1,隣接交換

2,ヘッドライト(オレンジ)とその間のエッジ(赤)が対面色の関係

3,ヘッドライトを含んだブロック(オレンジ緑の1×1×2)ができている

の3つの要素を含むことが分かり、T Permであることが確定します。

これは一つの簡単な例ですが、トップキューバー達はこのような保存されるOLLのブロックまでも頭に入れて、それらを瞬時に組み合わせてPLLを読んでいます。恐ろしいですね。

 

まとめ

最後に一つ、CP読みをするにあたって大切なことがあります。それは、"決してCP読みに時間をかけないこと"です。CP読みはあくまでPLLの補助をする存在に過ぎず、この技術を身につけても短縮できるのは0.1〜0.3秒ほどです。CP読みをするためにOLLの判断に時間をかけてしまっては本末転倒ですし、「上手く読めたらラッキー」くらいの気持ちで取り組むべきだと考えます。

 

以上がCP読みについての説明です。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
質問や修正すべき点がありましたら、@Karemeon_Cubeまで連絡していただけると助かります。

 

 

じゃあの👋